足首の外反捻挫

2018.11.26

足関節外反捻挫の症状

運動中に生じる最も多い足首の捻挫は、足を内側に捻ってしまい生じる内反捻挫内反捻挫のコラム参照)です。

しかし、足首を外側に捻ってしまい、三角靭帯と呼ばれる足首の内側の関節の安定性を保っている靭帯を損傷する外反捻挫が生じてしまう場合があります。内反捻挫よりも発生頻度は少ない捻挫ですが、スポーツによっては外反捻挫が生じやすい競技もあります。例えば、スパイクをはいて足が地面に固定される状態になりやすいサッカーなどの競技では、選手は足首を外側に捻りやすく、外反捻挫の発生頻度が比較的高くなります

症状としては、足首の内くるぶし下周辺に痛みや腫れが見られ、場合によっては内出血などがみられる場合もあります。内反捻挫と比較して厄介な点としては、内反捻挫よりも立った時や歩いた場合など、体重を足に載せて運動するときに、痛みが大きい場合が多いという点にあります。したがって、外反捻挫をしてしまうと、競技に復帰するまでの時間は同じ程度の内反捻挫よりも時間がかかってしまうことが多いです。

外反捻挫の対処法

全ての捻挫は骨折を伴っている場合がありますので、必ず医師の診断を受け、骨折などのケガをしていないか診断してもらいましょう。医師に診てもらう前の応急処置は、RICE処置が基本です。

外反捻挫は体重を足にかけると痛みが増大するという特徴がありますが、これには理由があり、この理由がわかると救急処置後の対処法が分かります。

足は、体重をかけると土踏まずなどの足のアーチがつぶれて踵骨(かかとの骨)は下腿に対して外側に多少倒れる構造になっています。また、体重をかけてアーチがつぶれ、踵骨が外側に傾くに従い、下腿の骨の一つである脛骨は、足部に対して内側に回転する仕組みになっています。したがって、捻挫した足に体重をかけると、アーチがつぶれ、踵骨が外側に傾き、脛骨が内側に回転することにより、毎回損傷した三角靭帯が引き延ばされ、痛みが増大する結果となりなす。

損傷部位を速やかに直すためには、損傷部位にストレスをかけすぎることは禁物なのは言うまでもありませんが、三角靭帯を損傷すると、過度なストレスが荷重時により生じやすくなります。これが、外反捻挫をしてしまうと回復までが長引いてしまう一つの理由です。

では、どのようにして過度なストレスを三角靭帯にかけないようにすれば良いのでしょうか。いくつか方法は考えられます。

一つは痛みが引くまで松葉づえなどを使い、体重は捻挫した足にかけすぎないようにすることです。

二つ目は、テーピングや足首のサポーターなどを使い、荷重時に踵骨の骨が外側に倒れすぎないようにすることです。この場合、足関節テーピングのスターラップ、ストラップ型の足関節サポーターのストラップなどを用いて、踵骨をしっかりと内側に引っ張るように固定することが有効です。ただし、あまり踵骨を内側に引っ張ってしまうと、今度は足首を内側に捻ってしまいやすくなるので、注意が必要です。

三つ目は、インソールなどを靴に入れ、アーチが下がらないようにしてあげることです。少し固めでアーチをしっかりと支えてくれるインソールはとても有効です。インソールを靴に入れるだけで、荷重時にかなり痛みが軽減されることがあります。これら3つの方法を組み合わせ、損傷部位を守りながら最大限リハビリを行うことが、回復への早道といえます。

外反捻挫を防ぐには

外反捻挫を引き起こす危険因子として考えられるものは、偏平足、着地や方向転換技術の未熟さなどが考えられます。また、足の裏を支えたり足部の関節の安定性を高める働きがある内在筋と呼ばれる、足裏についている小さな筋肉群の機能障害も、外反捻挫の危険因子として考えられます。

したがって、予防策としては、偏平足の人は、しっかりと足の裏の内在筋を鍛えたり、インソールを入れるなどして、運動時に足裏のアーチがしっかりと支えられる状態を作ることが重要です。また、着地動作などの衝撃吸収の技術やそれに必要な神経筋機能を高めるトレーニングを行ったり、しっかりとした方向転換技術を習得することは、足首を捻る確率を減らし、外反捻挫などの足部の捻挫の発生確率を減らすことに効果があるといえます。

過去に足関節捻挫などをし、足首に不安定性を感じる人などは、足関節のテーピングや足首のサポーターなどを装着して運動を行うようにすることも有効です。

ストロングストレッチテープを使った捻挫時のテーピングテクニックはこちら:最も基本的な足首捻挫予防のテーピング「Vロック」

著者プロフィール

下河内洋平 博士

博士(Exercise and Sport Sciences)

現大阪体育大学教授。2003年にアメリカ合衆国ミネソタ州においてNATA-BOC公認アスレティックトレーナーの免許を取得。2006年にノースカロライナ大学グリーンスボロ校において博士号(運動・スポーツ科学)を取得後、2007年まで同大学においてフルタイムの Postdoctoral Research Associate として働く。2007年9月より大阪体育大学に就任し、現在に至る。非接触性前十字靱帯損傷予防のメカニズムの解明や、そのための合理的なトレーニング方法の開発などを研究テーマの主軸として研究活動を行っている。