~終わりの見えないスポーツ団体での不祥事~

2019.11.28

今年も残り僅かとなり、来年の東京オリンピックへの各競技の出場選手選考レースもいよいよ佳境となってきました。選手たちにとっては今まで支援してくれた仲間や親兄弟に勇姿を見てもらえるまたとない機会となる自国開催でのオリンピックですから、出場のチャンスを掴むのに必死であることは想像に難くありません。


そのような状況の中でまたもや協会での不祥事が、、、全日本テコンドー協会の問題は連日メディアで垂れ流されています。

この問題を整理してみると、事の発端は今年9月に予定されていたオリンピック強化合宿への選手ボイコットでした。参加予定の28選手中、26人もの選手が不参加表明をして騒動が明るみに出ました。ボイコットの理由として、コーチの指導方法への不満と合宿の度に課せられる過度の自己負担が挙げられました。それでも強化合宿は強行され、高校生の女子と大学生の男子の計2選手のみで行われました。

その後、金原昇会長(当時)を筆頭とする幹部と選手における「協議会」と称する話し合いの場が設けられましたが、一向に解決せず、金原会長の空しい弁解のみがマスコミを通して伝えられました。


ここのところ、NF(National Federation)と言われる、国内における競技トップ団体で似たようなトラブルが起こってしまう状況が止まりません。昨年は、日本ボクシング協会の当時の会長が連日マスコミを騒がせました。これらの問題の根本に共通しているのは、要するに「ガバナンス」の問題です。テコンドー協会は、金原会長の長期政権による独裁となり、民主的な運営ができない状況になってしまっていました。人事においても、イエスマンを集めて選手の強化に口を出し、審判までに影響力を持つ。もしかすると、この後ボクシングの時と同じく不適切な経理の問題が出てくるのかもしれません。

当然のことながら次期会長になることはないにしても、このオリンピックを控えた大事な時期に、強化に本腰を入れられない環境に置かれているテコンドーの現役選手たちにとっては不条理極まりない状況です。金原会長は自ら「アスリートファースト」と発言しているようですが、「自分ファースト」に他ありません。誰が見てもおかしな組織であるにもかかわらず、このような体制が長年続き、自国で開催されるオリンピックが直前となった今だからこそようやく表面化したというのが実態です。


日本は、長きにわたって制度として君臨してきた「年功序列主義」の弊害で、年長者にモノを言えない雰囲気が未だに残ってしまっています。先輩後輩の理不尽な関係によりどれだけのモノやコトが失われてしまったのでしょうか。日本は、少子高齢化により人口と生産年齢人口の減少に歯止めが掛からず、建国以来最大の危機と言える状況でしょう。そんな中で、このような古い習慣によって現役選手たちが被害を受ける状況がこれ以上続いて良いのでしょうか。

2020年という日本スポーツ界にとって歴史的な一年を境に、日本の古い体質が変わり、各NFが真のアスリートファーストを実現していくことを願うばかりです。

著者プロフィール

佐々木 達也(東京都出身)

・城西大学 経営学部 准教授  スポーツマーケティング・マネジメント分野領域を専門とする。
・早稲田大学人間科学部スポーツ科学科卒業。早稲田大学スポーツ科学研究科修了。
・大手総合広告代理店にてスポーツに関する業務に携わり、Jリーグクラブ勤務後、金沢星稜大学人間科学部スポーツ学科講師を経て現職。現在もJ2ツエーゲン金沢シニアアドバイザーを務める。