概要
オスグッド・シュラッター病とは、膝蓋骨(膝のお皿)と下腿の骨(脛骨)を繋ぐ膝蓋腱が付着している膝下の下腿の骨のでっぱり(脛骨結節)部分が炎症または剥離骨折を起こし、痛みを伴うものを言います。時にはこの脛骨結節の部分が目立って出っ張ってしまうケースもしばしば見受けられます。
脛骨結節部分(Wikimedia Commons より)
このオスグッド・シュラッター病は、走ったり、ジャンプしたり、方向転換動作を頻繁に行うサッカー、バスケットボール、バレーボール、ハンドボールなどのスポーツを行っている子供たちに最もよく見られます。特に、男の子は12歳から14歳、女の子は10歳から13歳の成長が著しい時期に生じます。
オスグッド・シュラッター病が生じる原因
成長期の子供たちの骨には成長板という骨が成長する部分があります。この部分は比較的柔らかい軟骨でできており、骨が完全に成長するとこの成長板は硬い骨となります。
オスグッド・シュラッター病において痛みが生じる脛骨結節は、脛骨の端部分にあるこの成長板をカバーする形で存在します。
大腿部の前面の筋肉である大腿四頭筋が膝を伸ばすために力を生み出すと、その力は膝蓋骨に付着している膝蓋腱を介して脛骨結節に伝わります。
ジャンプや走動作、方向転換動作のような膝を伸ばして地面などを力強く蹴るような動きを行うときはこの大腿四頭筋が働き、脛骨結節は膝蓋腱を介して大きな力で牽引されますので、このような運動を頻繁に行う子供たちは脛骨結節に繰り返しストレスがかかります。
その結果として膝下の成長板が炎症を起こし、脛骨結節が剥離骨折することがあります。これがオスグッド・シュラッター病が生じる原因です。
症状
上述のような膝を伸ばす運動を行ったり脛骨結節あたりを押すと痛みが生じます。
また、大腿四頭筋やハムストリングス(大腿部の後ろの筋肉)の柔軟性が低下している場合があります。
対処法
膝下の痛みにより日常動作やスポーツ活動に支障をきたしたら、整形外科に行きましょう。
また、運動にそれほど支障が無いような場合でも、脛骨結節を押して痛みが生じるような場合は、運動を控え、膝を曲げて大腿四頭筋をしっかりと柔軟・ストレッチすることが重要です。
→大腿四頭筋のストレッチ方法(日本整形外科学会)
このような対処をしていくことで、症状が深刻化することを防ぎます。
また、バンド型の膝サポーターを膝下に巻くと痛みが軽減することがあります。
著者プロフィール
下河内洋平 博士
現大阪体育大学教授。2003年にアメリカ合衆国ミネソタ州においてNATA-BOC公認アスレティックトレーナーの免許を取得。2006年にノースカロライナ大学グリーンスボロ校において博士号(運動・スポーツ科学)を取得後、2007年まで同大学においてフルタイムの Postdoctoral Research Associate として働く。2007年9月より大阪体育大学に就任し、現在に至る。非接触性前十字靱帯損傷予防のメカニズムの解明や、そのための合理的なトレーニング方法の開発などを研究テーマの主軸として研究活動を行っている。