Let's enjoy soccer! ~Criticizing Moriyasu Japan!!~

2019.2.08

サッカーアジアカップ日本代表は惜しくも準優勝という結果に終わりました。皆様は、この結果をどのように捉えているでしょうか。今号は、いつもとは、少しトーンを変えて「森保ジャパンを斬る!!」をテーマにします。

無敗で迎えたアジアカップ

ワールドカップロシア大会終了後、9月に代表監督になり無敗でアジアカップを迎えました。親善試合5試合で4勝1分の無敗、「強いぞ」と勘違いしてしまいがちですが、対戦相手で手応えのある相手はウルグアイくらいで、あとは強化に繋がるマッチメイクはできませんでした。これは、スポンサーへの配慮(勝てる試合を組む)や、ワールドカップ直後で強豪が試合を望んでいない等、理由は幾つかありますが、アジアカップに臨む前としてはいささか不幸だと私は感じました。

昨年のワールドカップロシア大会の直前を思い出してください。親善試合で調子が出ず、監督が直前に交代し、国民の期待は薄らいだのは事実ですが、チームに与えた危機感と開き直りが功を奏して、グループリーグを突破して決勝トーナメントへ進出しました。2010年のワールドカップ南アフリカ大会の直前も結果が出ない中で本大会に突入して、決勝トーナメントへ進出しました。大会前に危機感を持っていた時の方が本大会では結果が出ているのが現実です。よって、もっと力のある相手との親善試合をマッチメイクして、チームの課題を抽出して、危機感を共有した中で大会に臨めたら良かったのではないかと私は思います。

予選リーグを突破し、決勝トーナメントへ

予選リーグ初戦トルクメニスタン戦は、まさかの先制点を奪われる大苦戦。日本は世界ランキング50位でトルクメニスタンは127位と完全に格下。明らかに日本チームは、油断しており守備時の相手選手との距離感やプレスの甘さが露呈した試合でした。続く82位オマーン、95位ウズベキスタンにも1点差の辛勝。2戦目から油断はなくなったものの、本大会での格下相手と戦う難しさを実感した試合内容でした。相手は当然正攻法では来ません。守備的な戦い方でカウンターを狙ってきます。そこを攻略するのは容易ではありません。その中でも、全勝で決勝トーナメントに進出したことは大きな成果です。以前なら、引き分けに終わっているような内容でも勝ち切ることができるのは、ロシアで成長を遂げた自信からと感じます。以前の日本代表より自信を持ち、相手を見下ろして戦うことができていると感じます。

決勝トーナメント1回戦の69位サウジアラビア戦は日本のボール保持率23.7%とほぼサウジアラビアにボールを保持されていましたが、戦術として敢えて相手にボールを持たせて、それを奪ってカウンターを狙うことに徹しており、厳しい日程での戦いの中で、相手に合わせて試合を運ぶ老獪さが出た試合でした。

準々決勝の100位ベトナム戦に1-0で辛勝して、アジア最上位29位で史上最強と言われているイランとの対戦。日本が今大会最も本気となり輝いた試合でした。結果は3-0で快勝。日本サッカーのポテンシャルの高さ、ワールドカップロシア大会での成長の証をアジアに見せつけた試合でした。日本の組織的な守備力、選手のボール裁きの巧みさ、相手選手の挑発に乗らずフェアプレーに徹した姿勢は、アジアの頂点に立つに相応しいチームであると見せつけた試合でした。

そしてカタール戦へ

しかし、サッカーは難しい。93位のカタールに1-3と惨敗。事実上の決勝戦と言われたイランに勝利し、油断をして入り方が甘く前半に2失点を喫してしまったのが全てでした。MF遠藤航の怪我による欠場が痛かったのは事実ですが、日本が次回ワールドカップでベスト8に進むためには、このレベルで敗戦しているようではいけません。日本は中三日でカタールは中二日と日程的にも優位の中で、油断と隙が生まれた。それ故に、相手選手にスペースを与えて立て続けに失点をしたことが敗戦の理由です。チーム力としては、日本の方が明らかに上でしたので、テレビを観ていた方々も残念な気持ちが強いでしょう。

ピッチ内で気になったことは、長谷部誠や本田圭佑のような耳の痛いことを言える選手が見当たらない所です。嫌われても正論を言う存在は組織には大切です。また、監督采配で気になったことは、選手交代のカードを切るのが遅いことです。トルクメニスタン戦では1名交代、オマーン戦では2名交代と交代枠を残しましたが、現代サッカーではあまり見られないのが現実です。ましてや決勝戦まで短期間に7試合の戦いの場です。監督の仕事は試合が始まったら、ハーフタイムに指示を出すこと、選手交代をすることであり、この2つの作業により戦況を優位に進めることができるかどうかが監督の手腕だと思います。

そうは言っても、「森保ジャパン」は、まだ船出を切ったばかり。アジアカップで7試合戦えたことで課題が抽出されました。それを、今後どのようにソリューションしていくか、組織が成長していくことが重要です。

6月には南米選手権コパ・アメリカに招待されており、7位ウルグアイ、13位チリ、57位エクアドルと同組のグループCに入りました。予選突破(2位以内)の可能性が十分にあるグループです。チームが進化していくためには、森保監督のチームマネジメントにかかっています

著者プロフィール

佐々木 達也(東京都出身)

・城西大学 経営学部 准教授  スポーツマーケティング・マネジメント分野領域を専門とする。
・早稲田大学人間科学部スポーツ科学科卒業。早稲田大学スポーツ科学研究科修了。
・大手総合広告代理店にてスポーツに関する業務に携わり、Jリーグクラブ勤務後、金沢星稜大学人間科学部スポーツ学科講師を経て現職。現在もJ2ツエーゲン金沢シニアアドバイザーを務める。