~Looking back on the Summer Koshien and the Japanese national soccer team~

2019.9.20

今年は、長雨の初夏から梅雨が明けると一気に猛暑になり、夏の終わりには台風上陸と、オリンピック・パラリンピックを一年前に控えた中で天候面での不安材料が多く出た形となりました。

今夏に印象的だった出来事として、夏の甲子園での履正社高校の優勝と星稜高校の準優勝は、管理志向の高校野球界にとって大きな意味があったのではないかと思っています。履正社高校、星稜高校共に全寮制ではなく、自宅から通って生活をして自主性を重んじる指導方法をとるなど、今までの高校野球の殻を破ったスタイルで今後の高校野球界に意味のある結果を残したのではないかと思います。私は以前、星稜高校と同じ法人の大学に勤務しており、道を挟んで高校と大学がほぼ同じ敷地内に立っていたこともあって、星稜高校の校風を肌で感じて過ごしていました。

星稜高校の特徴は文武両道であり、県内では進学校としても有名です。スポーツでプロになる生徒以外はほぼ大学に進学します。野球部とサッカー部が特に有名ですが、全国レベルの部活動は他にも存在します。野球部では読売ジャイアンツやニューヨークヤンキースで活躍をした松井秀喜さん、サッカー部では元日本代表の本田圭佑さんというレジェンドかつインテリジェンスを備えた選手を輩出していることで抜群の知名度を誇っており、認知度調査をしたわけではありませんが、恐らく全世代において7割以上は「星稜」の名前を知っているのではないでしょうか。

星稜高校の野球部林和成監督は、選手のことを生徒と呼び、教育的な観点が強いことが窺えます。サッカー部の河崎護前監督とは個人的にも親交がありますが、選手の自主性や学業に対する姿勢に非常に厳しく、加えて人間性を重視する教育を施しています。星稜高校のようなポリシーを持った高校が競技の成績を残し、管理志向かつ勝利至上主義のスポーツ界に風穴を開けてくれることをこれからも期待したいところです。


話は変わって、2022FIFAワールドカップカタール大会のアジア予選が開幕しました。初戦はアウェイでミャンマーに2-0と危なげない勝利となりました。豪雨と劣悪なピッチ環境の中で勝利したことは幸先の良いスタートを切ったと言って良いのではないでしょうか。スターに一極集中の報道をしたがる日本のマスコミは、久保建英選手の一挙手一投足に注目して取り上げる中で、森保一監督が途中出場で起用し、ワールドカップ予選最年少出場を果たして見せ場を作ったことは、商業的にも強化的にも意味のあることでした。特に公益財団法人日本サッカー協会(以下JFA)に巨額の協賛金を投じてくれている各スポンサー企業は、サッカー日本代表の注目度が上がることでスポンサードの価値が上がるため、約10分間の出場ではあったものの、大きく盛り上がり満足のいくスタートとなったのではないでしょうか。プロスポーツは、巨額なマネーが動くため、キレイごとだけでは済まない世界なのです。公式戦の交代枠3枠の中で、久保選手を起用した森保監督の決断には頭が下がります。サッカー日本代表が巨大コンテンツであり続けるためには、久保選手のようなスター選手が不可欠です。かつてのエース香川真司選手もこのまま黙ってはいないでしょう。現在のスペインリーグは香川選手のプレイスタイルにとっては最も適した環境であり、再び輝くことは間違いないと私は予想しています。久保選手と香川選手の競演が実現すれば、サッカー日本代表のコンテンツとしての価値が益々上がることは間違いありません。これからのサッカー日本代表にますます注目です。

著者プロフィール

佐々木 達也(東京都出身)

・城西大学 経営学部 准教授  スポーツマーケティング・マネジメント分野領域を専門とする。
・早稲田大学人間科学部スポーツ科学科卒業。早稲田大学スポーツ科学研究科修了。
・大手総合広告代理店にてスポーツに関する業務に携わり、Jリーグクラブ勤務後、金沢星稜大学人間科学部スポーツ学科講師を経て現職。現在もJ2ツエーゲン金沢シニアアドバイザーを務める。