投稿日:2022.07.28 14:28

トレーニングベルト着用の意味、選び方及び使用方法について

トレーニングベルトについて

皆さんはバーベルなどの重りを用いた筋力トレーニングを行っている人が腰に太いベルトを巻いているのを見たことはあるでしょうか。このようなベルトは一般的にトレーニングベルトまたはパワーベルトなどと呼ばれています。

このトレーニングベルトを腰に巻く目的は主に二つあります。一つは体幹の固定力を高め、腰をケガから守ること。もう一つはより大きな力を発揮し、筋力トレーニングの効果を高めることです。このコラムではこの二つの点に関して、初めてベルトを使用する方でも分かるように簡単に解説しつつ、トレーニングベルト着用の意味、選び方、使用方法などを紹介したいと思います。

なぜトレーニングベルト着用すると腰椎のケガが予防できるのか?

トレーニングベルト着用の最も重要な目的は、腹圧を高め、腰椎を物理的にサポートすることです。また、トレーニング時に体勢やフォームを崩さないようにすることがケガの予防にもつながります。
筋力トレーニングで重いバーベルなどを担いでエクササイズを行うと、正しい姿勢が保てなくなってしまい、椎間板ヘルニアやすべり症、分離症などになる危険性が高まります。頭部や首、両手を除いた骨盤、腰部、胸部の複合体の部分のことを体幹と呼びます。この体幹を骨だけにすると、図ように骨盤、腰椎、胸椎、肋骨などになります。
以下の図のように、体幹は骨だけでは非常に不安定で壊れやすい構造になっているのが分かります。そのため、私たちは重いバーベルなどを持ち上げるときに、腰椎を守るために背中の筋肉と、お腹の筋肉を強く収縮させ、お腹部分内部の圧力(腹圧)を高めることで体幹の安定性や固定性を高めています。

体幹と骨格

これが基礎となり、トレーニングベルトをきつく腰部分に巻き、お腹の筋肉に力を入れることで、より腹圧が高まりやすくなります。さらに、厚く頑丈なトレーニングベルトで腰椎に物理的サポートが加えられることにより、著しく腰椎の固定力が高まります。つまり、トレーニングベルトの着用により体幹の固定力がより高まるため、フォームが崩れず、腰や背中への負担を軽減させることになるのです。高重量のウェイトを用いたトレーニングを行う上級者のみならず、初心者の方や腰に不安がある方でも、トレーニングベルトを使用することでより安全に行うことが可能となるというわけです。

トレーニングベルトをつけると筋力発揮能力が高まる

私たちは手足を動かすときに、その動きの直前に無意識的にお腹に力を入れ、体幹の固定力を高めています。なぜなら、体幹は手足の根元部分となるため、それらの根元部分である体幹が安定しないと手足で力が出し難くなるばかりか、その動きもコントロールし辛くなるからです。
筋力トレーニングにおいても同じことが言えます。例えば、スクワットやデッドリフトなどで重いバーベルなどを挙上する時には、下半身で大きな力を発揮するためには体幹がしっかりと固定されている必要があります。そのために、トレーニングベルトは絶大な効果を発揮します。実際に、トレーニングベルトをお腹部分にきつく巻いた状態でお腹の筋肉に力を入れてスクワットを行うと、トレーニングベルトをしていないときよりもターゲットとする筋肉が安定し、腰に負担を掛けずに重い重量であっても持ち上げられることが体感できます。

これには、二つの理由があります。
一つ目の理由は、前述のとおり、トレーニングベルト着用により体幹の固定力が増大し、バーベルによる体幹筋群への負荷が軽減できること、
二つ目は、腹圧の高まりにより下肢の筋力発揮能力が高まるということです。
後者に関連するものでは、Tayashiki1)らの研究において、股関節の伸展筋力と腹圧の高まり度合いの関係性を検証しており、腹圧が高まるほど、股関節で発揮できる最大伸展筋力が高まるという関係性が報告されています。
筋力向上のための最も重要なトレーニング刺激は、目的とする筋において普段発揮するよりも大きな筋収縮力を発揮することです(過負荷の原則)。このことから、姿勢が崩れやすくなる高重量を扱う筋力トレーニング中にトレーニングベルトを着用することは、より安全に、より大きな筋力発揮を行うという観点から、筋力向上のためには非常に効果的であると言えます。もちろん、トレーニングする上では少しずつ重量を上げていき、筋肉を重量に慣れさせない刺激を与える続けることで、筋力アップをさせていくことが重要です。

トレーニングベルトの選び方と着用方法について

1.トレーニングベルトの選び方

サイズ

上で述べたトレーニングベルト使用の二つの目的(理由)から、お腹周りをきつく締めあげることができるサイズのベルトを選ぶことが最も重要といえます。胴回りが細い人は、ベルトの穴で締めぐあい調節するタイプのトレーニングベルトだと適切な位置に穴が無く、お腹周りをしっかりと締めあげることができない場合があります。一方、ナイロン製のストラップタイプ(下記 画像A)のトレーニングベルトであれば、胴回りが細い人でもお腹周りをきつく締めあげることができますので、お勧めです。

トレーニングベルトを巻いた姿
画像A
素材:革製 or ナイロン製?

革製(下載画像 B)はナイロン製(下載画像 C)よりも硬いので、適切にお腹周りを締め上げることができればより物理的な固定力が高まります。したがって、トレーニング上級者など、高重量を扱う方々にはおすすめの素材となります。ただし前述のとおり、革タイプはベルトの穴の位置でお腹の締め上げ具合を調節するタイプのものになりますので、ちょうど良い位置に穴が無い場合もあります。そのような場合は、ナイロン製のストラップ型を選ぶ方が良いでしょう。ナイロン製のストラップ型の中には、腰部の物理的固定力を高めるために、幅が広いタイプもあります。このタイプはナイロン製でありながら、腰部の固定力が高まりますので、トレーニングで高重量を上げる方などに適したおすすめのタイプとなります。
一方、ノーマルタイプのナイロン製のトレーニングベルトは、軽くて扱いやすく、お腹周りを締め上げやすいという利点があり、通常の筋力トレーニング上では十分な体幹の固定力を提供してくれます。したがって、一般の方々が筋力トレーニングを行う時や、日常生活で重いものを持ち上げる時など、さまざまな場面で腰を守りたいという方には、ストラップ型で通常のナイロン製のトレーニングベルトが使いやすくもあり、おすすめです。

革製トレーニングベルトを巻いてバーベルをあげる様子
革製ベルト(画像B)
上級者、高重量を扱う人におすすめ
ナイロン製トレーニングベルトを巻いてバーベルをあげる様子
ナイロン製ベルト(画像C)
締め具合を細かく調節したい人におすすめ

2.トレーニングベルトの使用法(巻き方)

レーニングベルトを巻いた様子

トレーニングベルトの目的は、より腹圧を高めて腰部に物理的固定力を与えることです。この目的を最大限に達成するためには、ベルトを巻くときに、右載画像のように、息を吐いてしっかりとお腹周りを締め上げてベルトを巻くことが重要です。

ベルトを巻いた後、物を持ち上げるときには、背中を真っ直ぐにしたまま息を少し吸い、お腹を膨らましてからお腹に力を入れましょう。但し、血圧の過度な上昇を防ぐために、お腹に力を入れながらも呼吸をし続けることが重要ですので、気を付けましょう。
動作の切り返し時(屈曲から伸展の瞬間など、動きの方向が変わる瞬間)など、特に大きな力を一気に発揮しなければいけない瞬間があります。このような瞬間には息を止めなければいけない時がありますが、その場合でも、動きの切り返し時など、一瞬の間(約1秒程度)だけにしてください。

高重量の重りを持ちあげる時には、一度深く息を吸い、お腹の筋肉を固めることで、最大に体幹の固定力を増大させることができます。ただし、息を止めて腹圧を上げ過ぎると血圧が高まりすぎることもあります。高重量を扱うトレーニングを行う時には、最初に必ずトレーニング指導の専門家から、腹圧の高め方の指導を受けた上でトレーニングを行ってください。また、トレーニングの休憩の際には、一旦ベルトを緩めるなど、きつく巻いた状態にしないことも忘れないようにすることが重要です。

3.使用上のメリット、デメリット

より安全にトレーニング効果を高めるためにはトレーニングベルトは良いツールです。
理由として、体幹の固定力を高めてくれること、腰部のケガを防いでくれること、筋力発揮がしやすくなることが、トレーニングベルトの使用メリットとしてあげられるからです。
デメリットとしては、トレーニングベルトに頼りすぎてしまうと、自分自身で体幹を固定する能力がつかないというようなことがあります。また、トレーニングベルトの使用は体幹の動きを妨げる場合もある、というデメリットもあります。
しかしながら、体幹を固定する能力を高めることを目的にするならば、重い重量を使うことはまずありません。そういった目的では、トレーニングベルトなしでも体幹の姿勢が崩れない程度の重量を持ちあげるトレーニングが良いでしょう。デメリットもありますが、何より、トレーニングベルト使用の最大のメリットである、より安全にトレーニング効果を高めるという部分を重視し、必要な時にトレーニングベルトを使用することが重要だと言えます。

最後にこのコラムが怪我を予防しながら安全に筋力トレーニングを行い、理想的な身体作りを行う一助になれば幸いです。

【文献】
1)Tayashiki K, Hirata K, Ishida K, Kanehisa H, Miyamoto N. Associations of maximal voluntary isometric hip extension torque with muscle size of hamstring and gluteus maximus and intra-abdominal pressure. Eur J Appl Physiol. 2017 Jun;117(6):1267-1272.
下河内洋平 博士

下河内 洋平 博士
博士(Exercise and Sport Sciences)

現大阪体育大学教授。2003年にアメリカ合衆国ミネソタ州においてNATA-BOC公認アスレティックトレーナーの免許を取得。2006年にノースカロライナ大学グリーンスボロ校において博士号(運動・スポーツ科学)を取得後、2007年まで同大学においてフルタイムの Postdoctoral Research Associate として働く。2007年9月より大阪体育大学に就任し、現在に至る。非接触性前十字靱帯損傷予防のメカニズムの解明や、そのための合理的なトレーニング方法の開発などを研究テーマの主軸として研究活動を行っている。

★Harbinger ブランドアンバサダー さまよりコメントが届きました!

清水優美恵

清水優美恵(しみずゆみえ)さま
トレーナーズジム 江古田店オーナー

私もお客様が初めてトレーニングベルトを使用する際に、怪我の防止と脚に力が伝わりやすくなることをお伝えしています。
また、ベルトを締めることで、「よし、やるぞ!」という気持ちの切り替えにもなっていると思います。
ちなみに当ジムではお客様用にフォームコアベルトを4サイズご用意しております。
色々な体型の方がいらっしゃいますので、マジックテープで調整できることがとても重宝しております。
私自身も高重量を扱う時は、ハービンジャーのフォームコアベルトでしっかり締め付けるのがしっくりきます。
幅が広すぎず狭すぎずなのが、トレーニング時に邪魔にならないので、重宝しております。

青木あかね

青木あかね(あおきあかね)さま
フィットネストレーナー/ビキニコンペティター

私自身もトレーニングの際のベルトは、必須アイテムとなっています!
腹圧を高めて、腰を怪我から守ることにもなりますし、高重量の刺激を与えてトレーニングすることができるからです。
ナイロン製のものも、革製のものもどちらも利用しますが、穴の位置で、減量時の自身のウエストサイズを測る目安にもなり、モチベーションにしています。
ハービンジャーのベルトは、デザインがかわいい、カッコいいものがあるので、トレーニングウェアと合わせて気分を上げて使用しています。
安全にトレーニングができるツールですので、初心者の方から高重量を扱う方まで、ぜひ取り入れて、ますます充実したトレーニングにしたいですね!